1. カディーシャ渓谷と神の杉の森

レバノン杉を抜きにしてレバノンを語ることはできません。レバノンの国旗にレバノン杉が描かれています。聖書によると賢王ソロモンは、エルサレムにあったソロモンの壮大な神殿の建設にあたってレバノンからレバノン杉がわざわざ輸入しました。レバノン杉は、虫を寄せ付けない特性、耐久性や美しさ、独特の甘い香りなどで有名で、ソロモンは神殿建設のために最高の建材を使おうとしました。かつてはレバノンの山々を覆い尽くしていたこの杉も、長年にわたる伐採のために現在ではレバノン国内に1200本ほどしか残っていません。現在新しい杉の植林が積極的に進められています。

2. ビブロス

ベイルートの北約30キロのところにある地中海沿岸の町。古代にはフェニキア人の都市として栄えたといわれています。アルファベットの元になったフェニキア文字もこの地で生まれました。そのために「アルファベット発祥の地」と呼ばれることもあります。現在レバノンではこのビブロス遺跡がある町は「ジュベイル」と呼ばれています。ビブロスでは、フェニキア時代の遺跡からローマ時代の遺跡、そして中世の遺跡など様々な時代の遺跡を見ることができます。ビブロス遺跡は1984年に世界遺産に指定されました。

3. バールベックとアンジャル

レバノン観光の最大の目玉はバールベック神殿。バールベックという名前には「ベカー高原の主神」という意味があるといわれており、フェニキア人の主神バアルが祭られていたことに由来するようです。その後、ギリシャおよびローマの影響で、ジュピターとバアルを複合した神殿が建てられました。現在の遺跡はジュピター・ヴィーナス・バッカスそれぞれの神をまつる神殿から構成されています。その中でもバッカス神殿の装飾の美しさは圧巻。息を呑む美しさです。またその大きさにもびっくりさせられます。

アンジャルは現在アルメニア人の住む地区となっており、アラビア語ではなくアルメニア語があちこちから聞こえます。世界遺産にも登録されたこの遺跡は、ウマイヤ朝のワーリド1世により8世紀に建設されたといわれています。ローマ時代の遺跡が数多く残る中東では、こうしたイスラム時代の遺跡は貴重です。アルメニア人が住み始めたのは1939年といわれており、トルコから逃れてきたアルメニア人によって、このかつてのイスラム都市が再び町としての機能を果たし始めました。

4. ジェイタ洞窟

世界最大ともいわれる鍾乳洞です。また世界の鍾乳洞の中でも最も美しいと称されるジェイタ洞窟。そのスケールの大きさはさながら宮殿のようです。全長7キロメートルのうち500メートルだけが観光用に公開されています。ベイルートから約10キロほどの場所にあるので、気軽に足を延ばすことができます。

5. ベイルート

海岸沿いにある鳩の岩はとても有名。ベイルートに来たらまずこの鳩の岩に行ってみたい。この鳩の岩の高さはおよそ22メートル。2つ立ち並ぶこの巨大な岩を見ながらコルニーシュ(海岸通り)をゆっくり歩いてベイルートっ子たちを観察してみてください。それからハムラ地区と呼ばれるオシャレな通りをぶらぶら歩くのも良い。旧市街をブラブラと散歩した後は、見ごたえある国立博物館へ足を延ばしてみることもできます。歩けない距離ではありませんが、ハムラ地区と国立博物館は少し離れているのでタクシーをご利用になることもできます。

6. シドンとティルス

シドンは長年にわたって古代フェニキア人の主要な都市でした。しかし後にシドンからの移住者が創建しティルスが重要さの点でシドンをしのぐようになります。ティルスは何百年間も交易によって発展し、ティルス産の紫布はとりわけ有名でした。この布はティルスの名を取って「ティルス紫」と呼ばれていました。聖書中のヘブライ人の預言者たちはフェニキアの都市ティルスの滅亡を予告しました。それらの預言は、西暦前332年にアレクサンドロス大王によって最終的に成就しました。このティルスの滅亡により,フェニキア時代は終わりを迎えました。これらの土地はイエス・キリストが宣教活動のために足を延ばされた都市でもあります。現在のティルスは世界遺産にも指定されており、ローマ時代の遺跡などを見ることができます。