中東=危険?ニュースでは分からない現地のリアル
「中東って危なくない?」「一人旅なんて無理でしょ?」私が日本に一時帰国するたびに必ず聞かれる質問です。
メディアや SNS では「戦争」「テロ」「暴動」といった不安な言葉が飛び交っていますから、そう思われるのも当然です。ですが、私は海外生活 17 年間のほとんどを中東で過ごしてきました (途中、1年半はドイツ滞在)。
実体験から見えてくる「本当の中東」は、メディアの描くイメージとはまるで違います。
実際に住んで感じた「中東のリアル」
私が初めて中東を訪れたのは今から約 19 年前。最初の訪問先はヨルダンでした。その後レバノン、トルコ、エジプトへと移動し、それぞれの国を拠点にオマーンやイラン、サウジなど中東各国を渡り歩いてきました。
この 17 年、メディアが描く「危険な中東」と、実際の生活とのギャップに、何度も驚かされてきました。
確かに中東全域が 100% 安全とはいえません。でも、それは世界中どこでも同じ。戦闘が続く特定の地域を除けば、ほとんどの場所で人々はごく普通に暮らしています。
メディア報道の偏りと現地の落差
たとえば、2015 年に日本人ジャーナリストがシリアで殺害されるという事件があった時のこと。メディア各社がヨルダンに押しかけました。「日本人がテロリストの標的にされている」「現地の日本人は怯えて暮らしている」など、センセーショナルな報道が飛び交いました。
当時ヨルダンに住んでいた私のもとにもテレビ局から取材の電話がたくさんありましたが、そのとき投げかけられた質問といえば…
怖くて外を歩けませんか?
自分がテロの標的になるんじゃないかという不安はありますか?
「現地では人々の生活は普通に営まれています」「怖いと思ったことは一度もありません」などとポジティブなコメントをしてもほとんど放送されず。日本のメディアが求めていたのは「不安に震える日本人の姿」だったのです。しかし、本当に人々の暮らしは至って普通。危険を感じたことは一度もありませんでした。
【2025 年 7 月時点】旅行が可能で比較的安全な中東の国は?
現在、観光目的での旅行が可能な中東の国は以下の通りです。
ヨルダン:
治安は非常に安定。観光インフラも整っており、一人旅でも安心。
エジプト:
治安は非常に良好。大都市でも夜間の一人歩きが可能なレベル。
トルコ:
治安は非常に良好。ツーリストへの対応も丁寧。
オマーン:
「中東のスイス」とも呼ばれるほど平和で、治安の良さはトップクラス。
※現在はイスラエル・イラン方面への手配は停止中です(情勢不安のため)。
なぜこれらの国は比較的安全なのか?
各国の背景や安定の理由も押さえておきましょう。
ヨルダン
• 天然資源に乏しく、アメリカやイスラエルの支援で中立を維持
• 地理的に「安定していてほしい国」として国際的に管理されている
エジプト
• 「アラブの春」以降、治安維持が最優先に
• 国民の大多数も「革命では生活は良くならない」と実感している
トルコ
• 政府の発言は強気だが、実際には経済立て直しを優先し、慎重な外交姿勢
オマーン
• 「中東のスイス」とも呼ばれる中立国家で和平交渉の仲介役としての役割を果たすことも
• イスラム教でも宗派が他のアラブ諸国と異なり、争いには加担しない伝統がある

女性一人旅でも安心して旅するための注意点とコツ
中東の人々は基本的に親切で人懐っこいですが、文化の違いを理解し誤解を避けるためのポイントがあります。
誤解されないための 4 つの行動ルール
1. ニコニコしすぎない
笑顔は「好意」と受け取られる場合も。アラブ女性は結婚相手ではない男性に対して基本的に愛想がありません。
基本は無表情でもOK。相手に誤解を与えない態度のほうが大切です。
2. YES / NO はハッキリ言う
アラブ社会は「空気を読む文化」ではありません。曖昧な態度は誤解のもと。
「嫌なことは嫌」と表情や言葉で明確に。
3. 主導権を持って堂々と振舞う
アラブは自分より強いか弱いかを図ろうとします。
強く出る必要はありませんが、YES/NO ははっきり示し、毅然とした態度が大切。
4. 写真撮影時の距離感に注意
アラブ世界では、男性が結婚していない女性の肩や腰に手を回すことは基本 NG です。しかし外国人相手には距離が近くてもOK と思っている人もいます。
写真を撮る際は程よい距離を保ちましょう。
それでも不安なときは?トラブル時の対処法
すぐにツーリストポリスや警察に連絡を。
ヨルダン:ペトラなど観光地には必ず「ツーリスト・ポリス」が常駐しています。旅行者の強い味方です。
トルコ:警察の対応は迅速で親切です。
エジプト:とても親切です。ただし念のために毅然とした態度を心がけてください。

最後に:中東の一人旅は本当にできる?
答えは、「YES」です。
もちろん場所や状況に応じた注意は必要ですが、これはどの国を旅行をするときでも同じです。正しい知識と心構えがあれば、中東は一人旅にも女性旅にも開かれたエリアです。メディアが描く中東の姿とは全く異なることに、むしろ拍子抜けされるかもしれません。
「行ってみたい」と思った時が、その場所を見られる最後のチャンスかも
下の写真は、2011 年、まだ平和だったころのアレッポ旧市街とパルミラ遺跡。現在では、いずれも戦争で大きな被害を受け、その美しい姿は失われてしまいました。
私は中東で 17 年暮らしてきました。その中で強く感じたこと――それは、「中東は、行ける時に絶対行くべき場所」だということです。
「また今度でいいかな」と先延ばしにしているうちに、見られなくなる景色もある。だからこそ、あなたが中東に少しでも惹かれているなら、ぜひ今こそその一歩を踏み出してみてください。

まとめ:中東は怖くない!でもリスペクトの気持ちは忘れずに
中東は、ヨーロッパでもないアジアでもない独自の文化と風景。そして人々の温かさにあふれた魅力的な場所です。中東は怖くない!正しい知識と準備さえあれば、女性の一人旅にも十分に適しています。
そして、皆さまの旅がより安心で素晴らしいものになるよう、私も現地で 24 時間サポートしています。
補足:中東をもっと知りたい方へ
ブログや寄稿で中東のリアルをお伝えしています。ぜひお読みください。
中東を旅するツアーコンサルタントが中東での日々を書き綴った泣きと笑いの辛口ブログ
不思議の国 Wonderland な中東を放浪して早 17 年目。アラブとは? 中東とは? 中東で甘いも酸いも経験したブロガーが中東の謎を紐解きます。
日本語版 Newsweek の World Voice への寄稿記事です。中東全般に関する記事が多数。
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