「20世紀の最も重要な考古学的発見」といわれる死海文書 (ヨルダン+イスラエル)

1947年、”20世紀の最も重要な考古学上の発見” といわれる重要な文書の数々が死海付近で発見されました。それにちなんで「死海文書」という名前が付けられた文書たち。これは古代ユダヤ人の手書きの文書や写本で、大半はヘブライ語、幾らかはアラム語、わずかはギリシャ語で書かれているようです。

 

 

死海は、晴れた日には空の青さを反射して真っ青になります。塩分濃度が30%以上といわれるほど濃い。塩のかたまりを見つけることができます。

 

 

死海文書が発見されたのは、この死海のイスラエル側のクムランと呼ばれる場所です。ベドウィンの羊飼いがある洞くつに一つの石を投げ込んだことがきっかけで発見されました。そのベドウィンは、土器の壺のようなものが割れる音を聞きました。たまたま投げた石が死海文書の入った壺に当たったのがきっかけで、死海文書が2000年の眠りから醒めることになります。そんなクムランはこんなに荒涼とした場所です。

 

 

ベドウィンから入手した当初の巻き物の中には、保存状態はさまざまではありましたが、七つの長い手書き文書があったようです。クムランにある洞窟の調査が進むにつれて、他の巻き物や無数の断片がたくさん発見されました。結局、1947 年から 1956 年の間にクムランでは、巻き物が収められていた洞窟が 11 も発見されました。それら巻き物や断片の多くは 2,000 年以上昔のもので、イエス・キリストが誕生するよりも前のものもあります。そのため、幾つかは「現存する世界最古の巻き物」と言われています。

 

巻き物や断片すべてを数えると、合計で約800点の手書き文書でした。その 4 分の 1 ほどの 200 点余りはヘブライ語聖書の色々な部分の手書き写本です。さらに、聖書の一部ではない古代ユダヤ人の書物があります。こうした数々の死海文書が書かれた時期は、西暦前 250 年から西暦 70 年までとされています。現在、死海文書の大半かつ重要な部分はイスラエルに保存されています。下の写真が死海文書の保管場所となっているイスラエル博物館。玉ねぎ型が特徴です。

 

↑こちらの写真は、イスラエル博物館の公式ホームページからお借りしました。死海文書の中でも特に重要なのは、完全な形で残った聖書のイザヤ書の写本です。西暦前 120 年ほどに書かれたといわれる文書です。このイザヤ書全体がイスラエル博物館内に展示されています。このイザヤ書は Google の協力によってデジタル化され、オンラインでも閲覧できるようにされています。こちらのビデオを見ていただくと、イスラエル博物館の中でイザヤ書がどのように展示されているかが分かります。

 

 

さて、この記事ではヨルダン博物館で見ることのできる死海文書を解説いたします。ヨルダンにあるのはそれほど立派な写本ではありませんが、いくつかの写本の断片と Copper Scroll といわれる意味深な金属の巻物があります。一挙ご紹介いたしましょう。

 

ヨルダン国立博物館

 

まずこちらが、死海文書が保存されていた土のツボです。ヨルダン博物館に展示されているのは、レプリカだと思われます。死海文書はこうした壺に保管されて、イスラエルにあるクムランの洞窟にひっそりと置かれていました。その後、調査が幾年にもわたって続き、死海文書が大量に発見されました。

 

 

ヨルダン博物館に保存されている死海文書の断片は3つあります。

 

↑ Testimonia 写本の断片

 

↑ 伝道の書 写本の断片

 

↑ イザヤ書の注解

 

これら3つの断片がヨルダンに保存されています。以前は、アンマン城砦のある考古学博物館に収められていましたが、現在はヨルダン国立博物館に移動しています。

 

なぜこの死海文書がそれほど重要な発見かといいますと、まず、現在の聖書が2000年前とほぼ変わらない内容で保存されていることが証明されるから。また、2000年ほど前、つまりイエスの時代のユダヤ人の生活背景について、ある程度知ることができるという点でも意味深いもののようです。さらに、YHWH (ヤーウェまたはエホバ) という神の名前がはっきりと残っているという点も重要なポイントのようです。加えて、古代ヘブライ語の研究にも欠かせない材料だということです。

 

このように死海文書の持つ意味は、広範囲に及びます。

 

さて、そんな宗教的な文書が大半を占める死海文書ですが、ヨルダンには Copper Scroll というちょっと一風変わった金属製の死海文書も保管されています。これには宗教的な意味合いは全くなく、宝の隠しどころなどが書かれているのだそうです。金属製なので開くことができなかったため、最終的には縦にカットされました。そんな意味深な Copper Scroll もヨルダン博物館に展示されています。

 

↑ 死海 Copper Scroll

 

このヨルダン博物館、火曜日は休館です。休館日以外は午前 9 時から午後 5 時まで開いていますが、金曜日のみ例外です。金曜日のご見学可能な時間は午後 3 時から 5 時までとなります。入場料はお一人様当たり 5JD です。以下の地図をご参照くださいませ。

 

 

“20世紀最も重要な考古学上の発見” といわれる死海文書。最新のテクノロジーのおかげで、学者たちは消えていた文字さえ判読できました。今後もこの文書が果たす役割はとても大きいと思います。イスラエルご観光の際は、イスラエル博物館をぜひご観光に含めていただきたいですし、ヨルダンのアンマン市内ツアーの際は、是非ヨルダン博物館を含めていただきたいと思います。

 

 

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