アルテミス崇拝で栄えたエフェソスの遺跡 (トルコ)

トルコはいわずと知れた遺跡大国。そんな遺跡群の中でも見ごたえがあるのがローマ遺跡の代表格であるエフェソス遺跡。トルコツアーの中には必ずといってもいいほど含まれています。遺跡好きの方にもそうでない方も楽しんでいただける観光地です。まずはエフェソスの場所を…

ケルスス図書館

遺跡内で美しさと気品の点でひときわ際立つのが西暦2世紀に建てられたケルスス図書館。この遺跡の写真をどこかで見たことがあるという方もおられるかもしれません。 この図書館には 12000 以上の巻物が保管されていたようで、古代世界で最も規模の大きい図書館の一つでした。この図書館のファサードには、4つの彫刻像が設置されています。ちょっと分かりにくいのですが、下の写真の矢印の部分です。 彫像は、ケルススのようなローマの執政官に求められた代表的な特質であるソフィア(知恵)・アレテー(徳)・エンノイア(専心)・エピステーメー(知識または理解) を表わしていました。実はエフェソス遺跡にあるこの彫刻はレプリカです。本物はウイーンのエフェソス博物館で見ることができます。下の写真は、オーストリアの博物館にある4つの彫像のうちの2つ。

↓左がソフィア(知恵)、右がアレテー(徳)です。

1907年にトルコ政府によって禁止されるまで、エフェソス遺跡からオーストリアに数多くの遺跡が移動されました。本物が本場のトルコにないのは残念ですね…。 ↑ケルスス図書館のファサード部分を下から見上げてみます。装飾の繊細さと美しさに息を飲まれるはずです。

ハドリアヌスの神殿

エフェソス遺跡にはさらに見所があります。このハドリアヌスの神殿。クレテス通りに並ぶ遺跡の中で一番保存状態が良く、装飾も美しい神殿です。

↓この神殿の美しい装飾をアップで撮ってみました。

両手を広げているのは女神メドゥーサです。

こちらも精巧な装飾ですが、レプリカとなっています。本物はやはりオーストリアのエフェソス博物館にあります。

大劇場

さて、他の見所は大劇場。下の写真の後ろ側に見えるのが大劇場の全体像です。

この大劇場は大理石通りにあります。ローマ帝国時代に最後の拡張が行われ、約2万5,000人の観客を収容できたと言われています。

この大劇場では、聖書の使徒活動の書19章で言及されている暴動が起きました。ここで少し聖書から直接抜粋させていただきます(使徒活動19:24-32節)。

銀細工人でデメテリオという名の者がおり,アルテミスの銀製の宮を作って職人たちに少なからぬ利得を得させていたが, この者がその職人やそうした事に携わる者たちを集めてこう言ったのである。
 
「諸君,あなた方がよく知るとおり我々はこの商売のおかげで繁栄を得ている。 そしてまた,このパウロという者がエフェソスだけでなくアジア地区のほとんど全域でかなり多くの人々を説き付けて違った意見を抱かせ,手で作ったものは神ではないなどと言っていることもあなた方の見聞きするところだ。
 
そのうえ,この我々の職業が不評を被るだけでなく,偉大な女神アルテミスの神殿が取るに足りないもののようにみなされ,全アジア地区また人の住む全地が崇拝する女神の荘厳さまでが無に帰せしめられてしまうという危険が存在するのだ」。
 
人々はこれを聞いて怒りに満ち,「偉大なのはエフェソス人のアルテミス!」と叫びだした。市は混乱に満たされ, 人々はパウロの旅仲間であるマケドニア人のガイオとアリスタルコをむりやり引き連れ, 劇場の中に一斉になだれ込んだ。
 
実のところ, ある者はこのことを, 他の者は別のことを叫んでいた。集会は混乱状態で, 大部分の者は自分がなぜ集まったかも知らなったのである。

数々の女神(その中でも特にアルテミス)を崇拝していたローマ人たちがキリスト教を広めていたパウロ達に反対して暴動へと発展した劇場がこの場所です。聖書の記述に通じている方なら、聖書に出てくるこの大劇場はとりわけ興味深いのではないかと思います。

4. アルテミス神殿

エフェソスといえば「アルテミス神殿」と言われるほど有名なのがアルテミス神殿。アルテミスとは、エフェソスで崇拝されていた女神の名前です。先ほどの大劇場の項目で聖書から少し引用しましたが、このアルテミスの崇拝に関連した銀製のグッズを作ることで、商売がかなり潤っていたようです。

この神殿は古代の世界7不思議の1つに数えられていたようで、それはそれはとても壮麗な建物だったようです。…といっても現在は、柱が1本残っているのみ。

下の写真はいずれも Wikipedia [Temple of Artemis] からお借りしました。

1本の柱が残っているのが現在のアルテミス神殿の姿。

アルテミス神殿のモデルです。

 

アルテミス神殿の内部には、高さがほぼ17㍍もある大理石の円柱が100本立ってたと言われています。屋根の部分は真っ白な大理石で覆われていたようで、遠くから見ても白く輝いていたことでしょう。また、大理石のつなぎ目にはボンドやモルタルではなく、金(ゴールド)が使われていたともいわれています。

ところで、そんなにまで熱狂的に崇拝されていたアルテミスの正体とは…? ギリシャ神話では狩猟と貞潔の女神とされています。

でもエフェソスでまつられていたアルテミスは、そんなギリシャ神話の女神とは似ても似つかないまるで別の女神だったようです。

というのも、エフェソスのアルテミスは豊饒(ほうじょう)の女神で、それはそれは不思議な格好をしているからです。アルテミスの像(二体)がほぼ完全な姿でエフェソス博物館に保管されています。

こちらが「美しいアルテミス」と名付けられ像。
こちらが「大いなるアルテミス」と名付けられた像。

「豊饒(ほうじょう)の女神」という表現にふさわしく、アルテミス像の上半身は多数の乳房 (あるいは卵または犠牲としてささげられた雄牛の睾丸などとも解釈されることがあるようです) で飾られています。

下半身はミイラのようで、様々な象徴や動物の装飾が施されています。はっきり言って気持ち悪いんですけれど…(笑)

このアルテミス像がアルテミス神殿の奥深くに祭られていたのでしょう。エフェソスの考古学博物館にあるこれらの像は非常に見ごたえがあるので、お時間のある方はこの考古学博物館にもぜひ足をお運びくださいね。地図を張り付けておきます。

5. エフェソス遺跡内の地図

エフェソス遺跡には他にも見所がたくさんあります。今日は4つだけこの記事で取り上げました。

エフェソス遺跡は大きさとしてはそれほど大きくなく、全てをじっくり見ても2時間ほどで観光できます。こじんまりした遺跡です。半日だけでも十分観光ができますので、ぜひツアーには含めてくださいね。

 

今日取り上げた4つの見所を含めた遺跡内の地図を張り付けておきます。ご観光の際の参考にお持ちいただければと思います。ちなみにアルテミス神殿は少し離れた場所にあります。

さて、エフェソスはローマ帝国時代にとても繁栄し、西暦1世紀にはおよそ30万人が住んでいたと言われています。この遺跡を歩いて、かつての栄華に思いを馳せることができます。

下の写真は、私がエフェソスを訪れたときにパフォーマンスが行われていた時のもの。ローマ時代の雰囲気が出ていてなかなか味がありました。

↓ お楽しみいただけたでしょうか? ポチっと応援してくだされば嬉しいです。